先日の記事にも書いたのですが、今年の誕生日当日は4年ぶりに副鼻腔炎になってしまい体調が悪かったので、予約していたディナーを泣く泣く2週間延期しました。
それから抗生剤や鼻スプレーのおかげで少しずつ回復し、延期した予約の日までになんとか全快できました!ああ、健康ってなんて素晴らしいの…当日にお祝いしたかったのはヤマヤマですが、延期して本当に良かったと思う今この瞬間です(理由は後ほど)。
節目の誕生日ディナーに向かった先は、フィニステール県で唯一のミシュラン二つ星、"Auberge des Glazicks"(オーベルジュ・デ・グラズィック)。料理コンクール番組"Top Chef"に毎年一度は出演されている、Olivier Bellin(オリヴィエ・ブラン)氏のお店です。トップシェフ好きの私のためにバンちゃんが奮発してくれました、ありがとう!
以下お店の方に許可をもらって撮った写真と共にご紹介します。
まずはシックな店内。大きな窓からは海が見渡せます。
メニューと一緒に渡された紙には、レストランで使われている食材の産地と生産者名(と連絡先まで!)がびっしり書いてありました。可能な限り地産地消を追求するシェフのこだわりが伝わってきます。
アミューズブーシュ(の一部)。蕎麦の実が敷き詰められた容器に一口サイズのタルトが乗っていて、勧められた順番にいただきます。
写真奥のビーツと地元産ハムのタルトが風味豊かで驚きの美味しさでした。
その後はメニューに書いてある料理がすべて順番に運ばれてくるのですが、私に提供された前菜はアーティチョークのクリームとチップス、ムール貝にイカ墨のソース。
なぜ「私に」かと言うと、注文の際に「嫌いなもの、アレルギー」などを尋ねられたので正直に「生クリームが苦手です」と答えたら、生クリーム入りの料理はすべて違うものに替えてくれたのです!なんとありがたい、、、アーティチョークのクリームが舌触りしっとり滑らかでムールの食感も絶妙でした。
空いた食器が下げられるとほどなく次のフォークやスプーンが置かれ、数分後には次の料理が運ばれてきます。なんてスムーズなサービス、無駄な時間や待たされているという感覚が一切ありません。
こちらはプリプリのラングスティーヌにカリカリの豚足(!)というマリアージュ。
ホタテ貝柱に透き通るほど薄いベーコンのスライス。付け合わせのépeautre(エポートル)という穀物はプチプチした食感が楽しく病みつきになります。丸いのは andouille(アンドゥイユ=豚の腸のソーセージ)のチップスです。
ブルターニュ産オマール海老とフォアグラのマリアージュ。熱々のオマールのブイヨンを注いでいただきました。白いのは Coco de Paimpol(ココ・ドゥ・パンポル)と呼ばれるパンポル産の白インゲン豆で、ホクホク食感とほんのりした甘みが美味しいです。
写真に撮りそびれたのですが、この後別のオマール海老と魚料理の2品が運ばれてきて、かなりお腹いっぱいになってしまい魚料理は完食できず…デザートも2品あるので大丈夫なのか?とかなり不安になりましたが、これは別腹でした!
プルガステル産フランボワーズのエストラゴン風味、ビスキュイブルトンのアイスクリーム。
大ぶりの木苺はしっかりエストラゴンの香りで爽やかな甘さ、そして感動すらおぼえたのがアイスクリームです。冷たいのに、トロッと口の中で溶けるのに、味は塩バタークッキーそのもの!すごい、凄すぎる。お腹いっぱいなのも忘れてペロッと食べられてしまいました。
そして極めつけは目で見ても楽しませてくれるチョコレートとパッションフルーツ、マンゴーのデザート。
球体のチョコレートカプセルに刺さった筒に熱々のチョコレートソースを注ぐと、球体がじわじわ溶け出してくるという演出でした。中にはチョコレートムース、マンゴー、サクサクのクランブルが入っていて、何もかも驚き。右側に添えられたチョコレートとパッションフルーツのソルベも2つの風味が完全に一体化していてまさに surprenant(驚きの)デザートでした…
が、チョコレートはやはり胃に重いので、頑張って口に運んだけれど半分ほどでギブアップ。生まれて初めて、本当の意味で「お腹がはち切れそう」になりました。ここまでの状態になったらもう、満腹を通り越して「苦しく」なってしまい、序盤にパンを食べすぎるんじゃなかったと激しく後悔。
いやでも、冷静に数えてみたら、
・アミューズブーシュ5個
・前菜1品
・小ぶりのメイン5品
・デザート2品
・食後のミニデザート3個
・一口ミントチョコレート
+パン5種(プレーン、蕎麦の実、いか墨、海藻、ベーコン)
これを最後まで余裕で食べられる人のほうが明らかに少ない気がします。お店の人に
「Copieux(コピュー=ボリュームたっぷり)ですね」
と言ってみたら笑顔で
「シェフは généreux(ジェネルー=寛大で太っ腹)なんです」
と返されてしまい、もはや苦しいお腹を抱えて笑うしかない(^^;; 他のお客さんからも「コピュー」がちらほら聞こえていました。
というわけで、最後のほうは苦しさのあまり美味しさを十分に堪能できなかったのがちょっと残念でしたが、シェフの寛大さと何よりブルターニュへの愛をひしひしと感じることができました。そして魚介と豚肉を大胆に合わせる「Terre-mer(テール・メール=山の幸と海の幸のマリアージュ)」も新鮮すぎる驚きと発見でした。
言葉ではとても言い表せませんが、ひとつ言えるのは、このレベルまでくると料理はもはや「芸術」だということです。食材の組み合わせも、味も、香りも、食感も、何もかも、料理の可能性は無限なんだなと実感しました。
シェフにお会いすることができなかったのも心残りですが、あらためて、故郷の日本を遠く離れ移住の地として選んだのが美食大国フランスで本当に良かったと思った夜でした。
健康体であっても量の多さに胃が悲鳴をあげてしまったので、体調不良をおして無理やり決行せず、2週間延期して本当に正解でした。行かれる方はぜひ、限りなくお腹を空かせて臨んでください。パンも味見程度にとどめておくのが懸命です。
L'Auberge des Glazicks
7 rue de la Plage, 29550 Plomodierne
02 98 81 52 32
要予約
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